3年生になって、世界史の先生が変わった。
1年生のときは黒瀬先生の現代社会だった。3年生になって世界史Aに変わり、担当が田村先生になった。
田村先生は、メガネをかけた男の先生だった。もともとは役所で働いていたらしい。しかも少林寺の師範でもあった。さらに、タップダンスも得意だった。
世界史の先生で、元公務員で、少林寺の師範で、タップダンサー。
情報量が多い。
でも、めちゃくちゃ魅力的な先生だった。僕は田村先生のことが好きだった。
授業の内容そのものは普通だった。でも僕は授業の前後によく田村先生と雑談していた。仕事の話、学校の話、世の中の話。先生というより、話の合う大人、という感覚だった。
そんな田村先生が、ある日こう言ってくれたことがある。
「板野さんは、教師に向いていると思いますよ」
31歳で高校に入り直した生徒の僕に、先生が「教える側」の可能性を見てくれた。驚いたし、正直嬉しかった。
この先生の授業時間を、いつか1時間もらうことになるとは、そのときはまだ思っていなかった。
つづく(次回・近日公開)