演説が終わると、その場で投票用紙が配られた。 学校全体の生徒数は200名程度だが、この日の参加者は130名ほど。授業がない日は登校する生徒が少ないためだ。
投票用紙が回収され、選挙委員会による集計が始まる。 結果発表は後日なのだが、どうしても気になって仕方がない僕は、同じクラスで副会長に立候補した「みつき」と一緒に、集計が行われている教室の外で待機することにした。
「板野さんに投票しましたよ!」 通りかかる生徒たちが何人か声をかけてくれる。その言葉が、緊張で強張った心にじんわりと染みた。
それでも不安は消えない。待ちきれなくなった僕は、集計が行われている教室をこっそり覗き込んだ。黒板に、一票入るごとに「正」の字が書き込まれていく。
——ペンギン先輩が、リードしているように見える。
彼女は3年生の人気者だ。1年生の僕が、知名度で勝てるわけがない。 「やっぱり無理やったかな……」 一度は弱気になってその場を離れたが、1時間後、意を決して再び黒板を確認しに行った。
そこで目に飛び込んできた数字に、僕は言葉を失った。
ペンギン先輩:63票 板野:67票
わずか、4票差。 最後の最後で、僕が逆転していたのだ。
副会長のみつきも、激戦を制して当選を果たしていた。僕たちは顔を見合わせ、喜びよりも先に「とんでもないことになった」という実感が胃のあたりにズシンときた。
あとから思うと、あの演説前にお喋りをしていた4年生たちを注意したことが、意外な形で効いたのかもしれない。 「この人が会長になれば、ヤンチャな連中もおとなしくなるんじゃないか」 そんな、学校の秩序を正してくれる存在への現実的な期待が、あの4票差に込められていたような気がした。16歳の生徒にはできない、31歳の「おじさん」だからこそ出せる空気に、みんなが賭けたのだ。
これから忙しくなるぞ!
そんなこんなで、31歳の生徒会長が誕生した。