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ep.35 1年生

31歳、生徒会長なる。〜立候補編〜

2月に入ると、これまでの生徒会役員たちが引退し、新しい組織へとバトンタッチする時期がやってくる。

会長、副会長、代議員会議長、会計、書記。この5名で構成される生徒会だが、当時は4年生が中心だった。卒業を控えた彼らに代わって、ほぼ全ての役職が入れ替わるタイミング。けれど、生徒会をやりたがる生徒は正直、ほとんどいないのが実情だった。

そんなある日、現生徒会長のきみ先輩から声をかけられた。 入学式で祝辞を述べ、文化祭でも生徒会を牽引していた、あの頼れる先輩だ。

「板野さん、次の生徒会長、やってみませんか?」

まさかの提案だった。 「えっ、僕がですか?」 思わずそう聞き返した。まさか自分が、という驚きが大きかったけれど、きみ先輩はいたって真面目な顔をしていた。

「もし、新しく入った高校の生徒会長が、先生よりも年上のおじさんやったら……それ、絶対おもろいな」

もともと「この学校をもっと面白い場所にしたい」という想いはあった。そこに現会長からの何気ない、けれど確かな期待が投げかけられたことで、自分自身がその「面白さ」の火種になれるかもしれないという好奇心が、静かに、けれど熱く膨らんでいった。

誰かに言われてやるんじゃない。自分がやりたいから、やる。

そうして、僕は生徒会長への立候補を決めた。通常、単独での立候補なら信任投票で終わるのだが、今回は3年生の「ペンギン先輩」が対抗馬として立候補していた。小柄で、ペンギンのように可愛らしく歩く彼女は、後輩たちからの人気も高い。

31歳の新人。3年生の人気者。 前代未聞の「年の差」選挙戦が、こうして幕を開けた。