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ep.14 高校入学前

31歳が、高校の入学試験を受けた日。

2020.02.12(水)

試験前日の夜、YouTubeを開いた。

数学の動画を探して、中学レベルの問題を一通り復習した。学校を辞めてから十数年、まともに勉強した記憶がない。どこまで覚えているか不安だったが、見ていると意外と頭に入ってくる。「こんな時代になったんだな」と思いながら、画面を眺めていた。

当日の朝は、少し緊張していた。完全に落ち着いているとは言えなかったが、あの願書を提出した日の「やるしかない」という気持ちは変わっていなかった。緊張より、覚悟の方が大きかった。

試験会場に入ると、周りはほぼ10代だった。制服姿の子、私服の子、みんな若い。その中に、明らかに成人していると思われる人が2人いた。

その瞬間、少しだけ肩の力が抜けた。

僕だけじゃない。同じように、大人になってからここに来た人がいる。それだけで、妙な安心感があった。人間、仲間がいると思えるだけで、こんなに気持ちが変わるものか、と思った。

学科試験は英数国の3科目だった。中学生レベルの内容で、拍子抜けするほど解けた。YouTubeで復習した甲斐があった。8割は取れただろう、という手応えがあった。

学科試験の後は、一人ずつ部屋に呼ばれての面接だ。

部屋に入ると、教員が3名座っていた。順に質問を受けた。なぜこの学校に来たのか、という問いには迷わず答えた。

「やり直しに来ました。」

願書を提出した時と同じ言葉だった。それ以外に言いようがなかったし、それが全てだった。

面接をしていた教員の一人が、にっこりと微笑んだ。その人が後に僕の英語の先生になるとは、この時はまだ知らなかった。