Re:31歳、高校生活はじめました
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ep.14 高校入学前

は、た。

合格発表の日。僕の心は、驚くほど凪いでいた。

普通なら、心臓が口から飛び出すほど緊張する場面なのかもしれない。けれど、僕のどこを探しても「落ちたらどうしよう」という不安は見当たらなかった。

試験の手応えがあったから、というだけではない。 「やると決めた。やり直しに来たんだ」 その決意が、不安が入り込む隙間をすべてふさいでいたのだ。 職業訓練校に落ちた時、僕は「もっと良い道へ導かれている」と直感した。だから、今この場所にある自分を、疑いようもなく信じることができていた。

僕は、ただ「確認しに行く」という淡々とした気持ちで学校へ向かった。

掲示板の前に着いて、辺りを見回した。 全日制の合格発表なら、受験生と親御さんの人だかりができ、歓声と涙が入り混じる光景が広がるのだろう。けれど、定時制の発表はまるで違った。

掲示板の前には、僕ひとりだけが立っていた。 人影も、歓声もない。冬の終わりの冷たい空気の中に、ただ一枚の白い紙が貼り出されている。

その中から、自分の受験番号を探した。

「……あった」

見つけた瞬間、込み上げてきたのは、爆発するような歓喜ではなかった。 「あぁ、やっぱりそうか」 という、静かな、けれど深く重たい納得感だった。

飛び上がって喜ぶわけでも、涙を流すわけでもない。ただ、自分の番号を見つめながら、これから始まる4年間の重みと、ようやくスタートラインに立てたという安堵感を感じていた。

僕にとって、合格はゴールではない。 止まっていた15年間の時計を動かすための、最初の切符を手に入れたに過ぎなかった。

家に戻り、待っていたあやちゃんに報告した。

「受かったよ。……これから、頑張るね」

「よかった! がんばってね、シュウくん」

大げさな祝福も、派手なお祝いもなかった。けれど、それが何よりも心地よかった。 あやちゃんはいつもそうだ。僕が決めたことを否定せず、過剰に騒がず、ただ「それでいいんだよ」と静かに見守ってくれる。

その揺るぎない信頼が、居候として再出発を始めた僕にとって、何よりの支えだった。

「これで、本当に高校生になれるんだな」

誰もいない掲示板の前で感じた、あの静かな確信。 31歳の「1年生」。 僕の人生を根底から変える4年間が、いよいよ幕を開けようとしていた。

つづく →