あやちゃんママの一言が頭から離れないまま、パソコンを開いた。
定時制高校、と検索した。どんな学校なのか。授業は何時から何時まであるのか。学費はいくらかかるのか。30代で通っている人はいるのか。気になることを片っ端から調べた。
読めば読むほど、新しい疑問が浮かぶ。調べながら、ふと気がついた。
あれ、俺は「行かない理由」を探しているんじゃないか。
ハッとした。
夜間だから仕事と両立できる、30代で通っている人の体験談もある。そして調べて初めて知ったのだが、学費が無償化されていた。僕が現役で高校に通っていた頃は学費がかかっていたので、これは素直に嬉しかった。客観的に見れば、障壁はそれほど高くない。なのに僕の頭は「でも」「だって」「今さら」という言葉を探し続けていた。前向きに調べているように見えて、実は踏み出さないための言い訳を積み上げようとしていた。
それに気づいた瞬間、なんだか悔しくなった。また後ろ向きになっている。何かを成し遂げたくて東京まで来たんじゃなかったのか。
その夜、あやちゃんに話しかけた。
「高校、行ってみようかな。」
これからどうしようか、という話の流れだった。改まった感じではなく、ぽつりと口から出た。言いながら、答えはもうわかっていた。あやちゃんがどう返すか、聞く前から見えていた。
「いいんじゃない、行ったらいいよ。」
予想通りの言葉だった。でも、やっぱり嬉しかった。
あやちゃんはいつもそうだ。「どうしようかな」と迷っている僕に、余計なことを言わず、ただ背中を押してくれる。反対されたことも、否定されたことも、ない。「itakoが思ったようにすればいい」というのが、あやちゃんのスタンスだ。そのシンプルな言葉が、どれだけ僕を動かしてきたかわからない。