当時の私の1日は、こんなふうに回っていた。
朝6時半に起きて、7時には出発する。配送の仕事を終えて家に帰るのが夜の20時ごろ。飯を食って、風呂に入る。そして夜11時になったら、また外に出る。今度は実家の新聞配送の仕事だ。朝4時まで走り続けて、帰宅して3時間だけ眠る。目が覚めたら、また仕事へ。
それが毎日だった。
睡眠は1日3時間。残りの21時間は、ほぼずっと働いている計算になる。当時はそれが当たり前だと思っていた。慣れてしまえば、人間はどんな環境にも順応できる。ただ、体だけは正直だった。
28歳のとき、ぎっくり腰になった。
朝、起き上がろうとした瞬間に激痛が走り、床から動けなくなった。それでも会社に電話すると「代わりがいないから出てきてくれ」の一言だった。這いずるようにして車に乗り、荷台から荷物を一つずつ下ろした。痛みで声が出そうになるのを、奥歯を噛んで堪えた。情けなかった。でも休めなかった。
そんな日々の中で、一番つらかった瞬間がある。
仕事を終えて深夜に帰宅すると、妻がいた。眠れずに待っていたのか、それとも物音で目が覚めたのか。薄暗い部屋の中で、こちらを見る妻の顔には、心配の色がにじんでいた。何も言わなかった。ただ、その顔を見た瞬間に「このままじゃダメだ」という気持ちが、胃の底からこみ上げてきた。
自分が消耗していくのは、まだ耐えられた。でも、大切な人に心配をかけながら、それでも何も変えられずにいる自分が、情けなかった。このまま歳をとって、何が残るんだろう。妻に、胸を張って見せられるものが、果たして自分にあるだろうか。
答えは出なかった。でも、このままではいけないということだけは、はっきりとわかった。