Re:31歳、高校生活はじめました
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エピソード01

夕暮れのトラックの中で、ゆずが僕に問いかけてきた

夕方の倉庫は、独特のにおいがする。

積み込みを終えたトラックのエンジンをかけ、車庫へ向かって走り出す。荷台には今日届ける荷物が積まれている。窓の外には夕焼けが広がっていた。こういう時間が、私はけっこう好きだった。ひとりで、静かで、余計なことを考えなくていい。ラジオだけがいつも隣にいた。

その日も、何気なくラジオをつけていた。

流れてきたのはゆずの曲だった。もうすぐ30歳になることを歌った曲だ。サビのフレーズが耳に入った瞬間、ハンドルを握ったまま、私は思わず手を止めそうになった。

あと数ヶ月で、俺も30歳だ。

そこまでは、ただの気づきだった。問題はその先だ。「30歳の自分は、今まで何をしてきたんだろう」という問いが、じわりと浮かんできた。仕事はしてきた。それは間違いない。でも、それだけだ。自分のために何かを積み上げてきたか?誇れるものが、何かあるか?胸を張って「これをやってきた」と言えるものが、果たして自分にあるだろうか。

答えが出なかった。

それ以来、その問いは頭から離れなくなった。

配送中も、荷物を積んでいるときも、深夜に帰宅して布団に倒れ込む瞬間も、常に頭の片隅にあった。「今後の人生、このままでいいのか」という漠然とした不安だ。30歳はゴールじゃない。人生はまだまだ長い。あと何十年もある。その時間をこのまま過ごすのか、という焦りが、静かに、でも確実に大きくなっていった。

誰かに話せるような悩みでもなかった。仕事はちゃんとしている。生活もできている。傍から見れば何も問題はない。でも自分の内側だけに、ぽっかりと穴が空いているような感覚がずっとあった。

この感覚、わかる人にはわかるんじゃないかと思う。