今年もこの時期がやってきてしまった。定時制高校の春の恒例行事、「体力測定」だ。
32歳になった僕を待っていたのは、残酷なまでの「衰え」との対面だった。 特に僕が苦手としているのが、持久走だ。
種目は1500m。 15歳の後輩たちは弾けるような若さで風を切っていく。速い子たちは5分台で走りきり、息一つ乱さずゴール後の談笑を楽しんでいる。ちなみに全国の16歳の平均は6分54秒らしい。
一方の僕はといえば、走り始めてすぐに脇腹が差し込むように痛み出し、呼吸がどんどん浅くなる。 「……きつい、きつすぎる」 去年の記録は8分30秒。せめてそれに近いタイムで……と願ったが、時計の針は残酷だった。
結果、9分12秒。
去年より42秒も遅くなっている。 「1年でこんなに落ちるものなのか……」 ゴール地点で膝に手をつき、荒い息を吐きながら、僕は自分の老化を認めざるを得なかった。苦手は克服したいけれど、この脇腹の痛みは一筋縄ではいかない。
後日、この体力測定の結果が「調査結果」という書類になって手渡された。 そこには僕の記録と、16歳の全国平均、東京都平均、そして我が校の平均との比較が並んでいる。
判定は、AからEまでの5段階評価で、僕は**「C」**だった。
総合コメント欄にはこうある。 『体力レベルは平均的です。積極的に運動を行えばさらに体力がついてくるので、苦手な運動を強化し、体力アップを目指しましょう。持久走が遅いので、ジョギングや縄跳びなどで鍛えましょう』
要約すると「お前、持久走が遅いからもっと走れ」ということだ。
32歳の僕にとって、16歳の平均値と並んで「C判定(平均的)」をもらえたことは、ある種の勲章のように思えた。 「30代にしては、相当頑張っているほうじゃないか?」
そう。僕は15歳も年下の現役高校生たちの「平均」に、今もしがみついているのだ。 来年もまた、この緑色のダサいジャージを着て、1500mを走るだろう。
「平均的」という言葉を維持するために。 僕の2年目の挑戦は、筋肉痛の予感とともに、また一歩進んでいく。