新入生歓迎会での「ひまわりの約束」。 練習では一度も成功しなかったアルペジオを、本番のステージで完璧に弾ききったあの宣伝は大成功だった。
実は、当時の軽音楽部はかなりの危機的状況にあった。 頼りにしていた4年生の先輩が二人卒業してしまい、実質的に活動しているのは、僕を含めてたったの5人。 「せめて数人でも入ってくれると嬉しいな……」 部長のような立場として、僕はそんな控えめな願いを抱きながら、新学期の勧誘に臨んでいた。
しかし、ふたを開けてみれば、結果は僕の予想を遥かに超えるものだった。
あの図書室での出会いが決定打となった。あの日、僕の周りに集まっていた子たちが、次々と「入部したい」と声をかけてくれたのだ。
まず、1年生からは8名もの仲間が加わった。 図書室で再会した留年生の彼女や、成人学生として安心感を抱いてくれた20歳の彼女。それに、図書室のテーブルを囲んでいた元気な1年生たちが、こぞって入部を決めてくれた。
さらに驚いたことに、同学年の2年生からも2名。 編入生の彼や、僕と同じクラスの女子生徒が仲間に加わった。
合計、10人もの新しい部員。
「すごい! すごいぞ!」 心の中で快哉を叫んだ。 もともとの5人に10人が加わり、部員は一気に15人の大所帯になった。夜間定時制の小さな部活としては、これはもう異例中の異例と言っていい規模だ。
「ひまわりの約束」の宣伝効果は、まさに絶大だった。 これだけの人数がいれば、僕が卒業するまでのあと3年間、軽音楽部は安泰だ。機材の運び出しも、バンド編成のバリエーションも、これからは何だってできる。賑やかになった視聴覚室での練習風景を想像して、僕は言いようのない安心感と喜びに浸っていた。
「よし、これで軽音部の未来は明るいぞ」
そう確信して、僕は新しい仲間たちを温かく迎え入れた。 15歳の瑞々しい感性と、僕たち大人の経験が混ざり合う。放課後の校舎に、これまでとは違う厚みのある音が響き渡る。
今はただ、予想外の成功と、新しく入ってくれた10人の仲間たちとの出会いに、素直に酔いしれていた。 32歳の2年生。 僕の高校生活は、最高に賑やかな音色とともに、第2章の幕を華やかに開けたのだった。