春休みが終わり、4月。 桜の季節とともに、僕はついに高校2年生になった。
31歳で入学し、無我夢中で駆け抜けた1年目が終わった。 卒業までは、あと3年。 「まだ3年もあるのか」と思うのか、「あと3年しかない」と思うのか。 今の僕にとっては、そのどちらでもあった。けれど、確実に言えるのは、この夜の校舎での生活が、僕にとってかけがえのない居場所になっているということだ。
数日後には新1年生が入学してくる。 去年、自分がガチガチに緊張して校門をくぐったあの日から、もう1年が経ったなんて。 「どんな子たちが入ってくるんだろう」 「おじさんの僕を見て、どんな反応をするかな」 そんなことを考えると、ワクワクが止まらなかった。今度は僕が、彼らを迎え入れる「先輩」なのだ。
新学期の登校初日。 期待と少しの緊張を胸に校舎へ向かうと、昇降口の靴箱には新しいクラス分けの名簿が大きく貼り出されていた。 みんながその紙を囲んで、「あ、一緒だ!」「マジかよー」と一喜一憂している。
けれど、その名簿を見て、僕はふと足を止めた。 違和感の正体は、すぐにわかった。
「……クラスが、減ってる」
1年生の時は4クラスあったはずなのに、2年生の名簿は3クラス分しかなかった。 理由は明白だ。人数が減ったのだ。 留年した者、一身上の都合で辞めていった者。1年生の間に、およそ10名ほどの仲間がこの場所から姿を消したことになる。
夜に働き、夜に学ぶ。 その生活を継続することの難しさを、改めて突きつけられた気がした。 去年、給食を一緒に食べたあの子や、廊下ですれ違ったあいつ。貼り出された名前の中に、もう彼らの文字は見当たらない。
定時制高校の現実は、春の穏やかな日差しの中でも、どこか冷徹にそこにあった。
寂しさを飲み込みながら、自分の名前を探す。 僕は「2年A組」だった。 そして、名簿の一番上に書かれた担任の名前を見て、僕は思わず顔をほころばせた。
「前原先生だ」
1年生の時と同じ、あの少しチャラそうで、でも最高に頼れる前原先生が、そのまま僕たちの持ち上がりで担任になってくれたのだ。
環境が変わり、仲間が減っていく中で、担任が変わらないということは、僕にとって何よりの安心材料だった。先生は僕が32歳であることも、1年目にどんな思いで勉強してきたかも、すべて知ってくれている。
「板野くん、またよろしく」
そんな先生のニヤリとした顔が、廊下の向こうから浮かんでくるようだった。
失われた10人の席。新しく入ってくる1年生。 そして、変わらない担任の先生。
少しだけ広くなったような気がする教室へ向かいながら、僕は2年生としての第一歩を力強く踏み出した。
ここからまた、僕の「やり直し」の第2章が始まる。 まだまだ、これからだ。